サラサラとした黒髪。
筋の通った鼻。
凛とした瞳。
穏やかで、繊細で……美青年を匂わせるその美しい顔立ちを、一瞬で崩してしまう無邪気な笑顔。
……私、この人のこと……知ってる……?
心が私に訴える。
〝思い出して〟
〝忘れないで〟
「ここのレストランは、メニューのほとんどにタイムを使われてるみたいですよ」
「……タイム?」
そういえば、この人が決めた 鯛のソテータイム風味というメニューにも、タイムという言葉がついてる。
「ハーブの一種です。肉料理の風味付けには最適なんですが、魚に使ってるのがレアで、気になって僕はこれを頼みました」
「……へぇ。物知りなんですね……」
「ええ、まあ、いろんな時代の本をたくさん読んできましたから。歴史書でも、物語でも、なんでも……」
また、胸が疼いた。
なぜだか無性に、泣きたい気持ちになる。
……あなたは……誰……?


