沢上遥さんとの約束の場所は、彼女が住んでいる場所の近くの、割りかしオシャレなレストランだった。
落ち着いた雰囲気の場所で、ランチをしながらお話でもしようという出版社の方針で、こちらから作家さんのもとへ出向くことが基本である。
行き着いた場所で、ドアを開ける前に一息つく。
やばい、なんか緊張してきた。
〝Thyme(タイム)〟
レストランの名前は、ちゃんとあっている。ここで間違いない。
どこか、ノスタルジアを覚える名前だと思った。
個人で経営しているお店だから、その独特な雰囲気に呑まれてるだけかもしれないけど……。
――カランコロンカラン。
「いらっしゃいませ〜」
「あ、すいません。山田で予約させていただいてるんですが……」
山田という名前は、編集長の名前だ。
「2名様でご予約のお客様ですね。もう1人の方はお先に来られてます。こちらになります」
……なんと!
もう沢上遥さんは来てるの!?
私の焦る気持ちとは裏腹に、店員さんはニコリと微笑を浮かべて席まで誘導してくれた。


