「ごめん。ほんとに、自分勝手でごめん」
「どうして勝手にいなくなるの!?もう会えないかと思った……っ」
「うん。もう会うつもりはなかったよ」
軽々しく、彼方はとんでもないことを言った。
ふざけるな!そう叫んでやろうと思ったけど、寸でのところで止めた。
彼方の悲しげな顔がチラリと視界に映ったから、言えなかった。
なんとなく、私とは会わないって決めたのには、理由があるってことも気づいてた。
でも、今、こうやって会えたから、もういい。抱きしめてくれてるから……許す。
「未歩、今日、俺のこと忘れてたでしょ?」
彼方が問う。私はコクリと頷く。
「忘れてた。ずっと思い出したかったのに、全然思い出せなかった。誰かさんが記憶消したせいで……」
ふてくされたように、彼方の胸に顔を埋めながらつぶやく。
こんな顔、見られたくない。
それに、勢いだとはいえ、抱きつきてしまったことが恥ずかしくて、今更顔を上げるタイミングをなくしてしまった。


