……うそ。……どうして……?
震える足で、私は立ち上がる。
おぼつかない足取りで、彼方のもとへと一歩一歩近づいていく。
涙で滲んで、ぼやけて、彼方の姿がちゃんと見えない。
怖い。
早く。早く捕まえないと……またいなくなっちゃう。
「未歩」
彼方の私を呼ぶ声で、プツンと糸が切れた。
堪らず私は駆け出し、しがみつく勢いで彼方に抱きつく。
「……ちょ、未歩……っ」
私が彼方の胸に顔を押し付けると、彼方の珍しく妙に焦った声が耳に届いた。
だけどそんなの、気にしてられない。
夢でも幻でもない。彼方の体温……彼方の実体が、ちゃんとここにある。
思う存分、それを実感してから、私は今思ってることを口々に言った。
「バカ!バカ!バカ! 私が今日、どんな想いでいたか知ってる!?ずっと彼方のこと探して……もう会えないかもって……どれだけ怖かったか……わかる!?」
怒りに身を任せ、ドンッと彼方の胸を強く叩いた。
ちょうど、心臓があるところ。
彼方が小さい頃、過去に借金を背負ってでも生きる力をくれた心臓。


