唯一、彼方が残してくれたものを見つめる。



年季が入っているせいか、色褪せてしまっている原稿用紙。



題名はなくて、主人公達の登場人物の名前もない。しかも完結はできてなくて……なんて中途半端な物語なんだろう。



彼方は、この作品のどこに救われたんだろう?


小説の話をするたびに嬉しそうだったのは、この物語の完成を見届けたかったからなんだよね。



だけど航を失って、続きが書けなくなってしまった私のために……彼方は。




「彼方は、私の未来を守ってくれたんだね」



……そうだ。



あの瞬間……航を失った瞬間から、私の未来は闇に包まれた。


だけど彼方が時を超えて、私を見つけて、助けてくれた。


私は彼方と出会えたことで、強くなれたんだ。


彼方がいたから、また未来と出会うことができたんだ。