しばらくその場で泣きじゃくっていた私に、ほどなくして看護師さんがつぶやいた。



「今は辛いかもしれませんが、私たちもできる限りのことは協力しますので、元気を出してください。
一瀬さんという方がこの病院の他の病棟に入院してる可能性も考えられるので、確認をとってみますね。分かり次第お伝えしたいと思います。
なので、ご連絡先をお伺いしても構いませんか?」



……連絡先……。



私はそっと、自分の制服のポケットに触れる。



ケータイないや……。



そう言えば、カバンの中にいれたまま、美術室に置きっぱなしだ。



あのとき、急いで教室を飛び出したから……。




「……取り乱してしまってすいません。もう、大丈夫です」



ようやく落ち着きを取り戻した私は、そっと立ち上がり、迷惑をかけてしまった看護師さんに頭をさげる。



そして、頭のどこかでケータイのことを考えていた。



もしかしたら、ケータイに彼方の連絡先が残ってるかもしれない。



滅多にメールや電話なんてしなかったから全然使ってなかったけど、航と交換してたときに私も一緒に教えてもらったんだ。




……繋がるかもしれない。





それが最後の賭けだった。