「大丈夫ですか……?」


心配した看護師さんが、そっと背に手を当て、寄り添ってくれる。



大丈夫じゃない。


大丈夫なんかじゃない。



「だって、昨日までいたんです。ちゃんと私の目の前にいてくれた。未歩って、名前を呼んでくれた……!それなのに……っ」



とうとう私は、その場に泣き崩れた。



行き場のない私の悲痛な叫びだけが、この空間の中で響いている



私はいったい何をしてるんだろう。


こんなに大泣きして、看護師さんも困ってるじゃないか。


なのに気持ちが溢れ出して、止まってくれない。



「……記憶がなくなっちゃうなんて……もう会えないなんて、普通、思わないじゃないですか……!
もっと一緒にいれると思ってた。ずっと私の小説が完成するの待ってくれると思ってたのに!」



それなのに、彼方は忽然と姿を消した。




「私は何も言ってないのに……ありがとうも、ごめんねも、別れの言葉も……!」




言いたかった。



言えなかった。



彼方のことが、好きって気持ちも。