「探し物って?」



そう聞けば、彼方は片方の手でまっすぐに私を指差した。私の持ってる、色褪せた原稿用紙を。



「その原稿用紙だよ。それを3日前に図書室で失くしてから、ずっと探してたんだ」



失くした?


……これを、彼方が失くしたの?




「寺本くんが図書室で見つけてくれたんだよ。それで、私に返してくれた」



「…………」



「だってこれ、私のでしょ? 上原未歩って書いてあるじゃん」



「…………」



「この続き原稿用紙も、彼方の病室で見つけたよ。ねぇ、なんで私の原稿を彼方が持ってるの?」



彼方のもう片方の手におさまる原稿用紙の束が、窓から吹いてくる風につられて揺れた。


まるで〝気づいて〟って、私に訴えてるみたいに。