私の中で、忘れてしまっていた記憶が蘇る。


時間の流れで、色褪せてしまった航との思い出。


今、確かに思いだせた。



もうきっと、私は大丈夫だ。



すごく辛いことがあって、挫折しそうになっても。


すごく悲しい出来事が、あたしの心をボロボロにしても。



航との思い出をひとつひとつ忘れずに、今日の出来事も全て心に焼き付けよう。


楽しかったことも、苦しかったことも、全部、なにひとつ取りこぼさないように。



もう忘れないないから。


ちゃんと大事にするから。



だってそれを思い出したとき、あたしは強くなれる。


この先何があっても、乗り越えられる気がした。



絶対、そうなんだって思った。




「ありがとう、航」



見えない幼なじみに、笑顔でそう告げる。


優しい風が、まるで返事をするみたいに、涙の跡をつけた私の頬を撫でていった。