「私……彼方が好きなんだ……」
静かなふたりきりの空間。
私の声が、ゆっくりと、浸透するように沙奈に伝わる。
「そっか」
沙奈のおだやかな声音が、静寂の空気に優しく溶け込む。
「……なんとなく、そんな気がしてた」
そして、絵の中の私に触れながらそうつぶやいた。
沙奈のスケッチブックの私は、どんな風に描かれているのだろうか?気になる。
気になるけど、今は沙奈が何を考えているかの方が気になる。
「未歩、毎日欠かさず彼方のところに行ってたでしょ?
彼方の力になりたいって、彼方の為に、いつも彼方のことを想ってたでしょ?」
目の前の紙を優しく、愛でるように撫でる沙奈。
「だけど突然、彼方のところに行かなくなった」
「……っ」
「なにかあったんでしょ?」
沙奈は、気づいてたんだ。
「私が気づいてないとでも思った?」
私の動揺っぷりに、沙奈は少し得意げに笑う。
「わかるよ。何年親友やってると思ってるの?」


