「ごめんね。黙ってて」
申し訳なさそうに、沙奈は謝る。
なにも答えられない。うまい返しが見つからない。
だって知らなかった。
私の親友が、好きな人に振られていたことも。
夢を目指すために、大きな決断をしていたことも。
その夢を叶えるべく、親とケンカして悩んでいたことも。
「ごめん、沙奈」
私は一歩、沙奈に近づく。
「沙奈が悩んでたときに、支えてあげられなくてごめん……」
涙がでそうだった。
私っていつもそうだ。
大切な人が、心の奥底で叫んでる言葉に気づいてあげられない。
本当はきっと、すがりたかったはずなのに。
航も沙奈も。
自分のことしか見えてない私に、きっと相談なんてできなかったんだろう。
迷惑をかけたくないからとか、心配させたくないからとか、そんな優しい理由で。


