そして、沙奈は美術室の端にある作業机に視線を移した。そのまま真っ直ぐにそこに向かって指を差す。
つられてあたしも、そちらを見る。
「あれ」
沙奈の指差す場所にはひとつの机があり、そこに飾って置いてあるのは、3人の人物が仲良く笑ってる楽しそうな絵。
ひとりひとりの特徴がうまく描かれていて、その人物が誰なのかすぐにわかった。
沙奈と航と……私の絵だ。
「この絵ね、仕上げの色塗りの途中なんだ」
私の隣にいた沙奈は歩き出し、机の上の絵を手に取った。
「彼方に頼まれたの。3人の絵を描いてほしいって。私の絵で、いつでも3人を見たいって」
「…………」
彼方はなぜ、沙奈に〝3人〟の絵を頼んだのだろう?
美しく彩られたカラフルな世界は、キラキラして、眩しくて、明るい。
だけどそこに……その絵の中に、彼方がいない。
まるで、四つ葉のクローバーの葉が1つだけ欠けてるみたい。


