そして、航はおとなしく部活へ行き、私たちは美術室へとやって来た。



ここに来たのは久しぶりだ。もちろん、沙奈とふたりになるのも。



「ずっと言おうと思ってたんだけど、タイミング逃しちゃって。……ごめんね?」



無理してるような笑みを浮かべ、謝ってきた沙奈。



沙奈はこれからなにを言おうとしてるのか。



その切なげな表情に、妙に胸が締め付けられる。



「……私、彼方に振られたの」


「えっ……?」



驚いたなんてもんじゃなかった。


唐突に、思ってもみない言葉を言われ、なにがなんだかわからなくなる。



「ちょうどバイトがない日に、ひとりで彼方のお見舞いに行った日に、帰り際に未歩とあったときがあるでしょ? 」



あの時ふたりきりになれたから、勢いで告白しちゃったんだ。と、泣きそうな顔で沙奈は告げた。



言われて思い出す。


あれは、あの日は確か……私が彼方のもとへ、たくさんのりんごを持って行った日だ。