それを合図に、私の横を航が通り過ぎる。



……まるで、すれ違うように。



航が作り上げた風によって、私の髪が少しだけなびいた気がした。



私も前を向いて歩き始める。お互いに、振り返ることはない。




気づけばこの時からだったのかもしれない。



時のひずみに身を任せて、いつしか大切なものを見落としてしまっていた。


そして長い時間、私はそれに気づかなかった。


気づけなかった。



ごめんね。


振り返ることを忘れていて。


大切な君の気持ちに、気づいてあげられなくて。



ごめんね航。




気づいたときには、もう遅かったね。