「未歩!」



グイッと誰かに手を引かれ、私の走る足は止められた。



誰なのか認識する間もないまま、その力強い腕に抱き寄せられる。


だけどこの匂いは、私が小さい頃から知ってるものだった。



「どこに行くんだよ……」



航の震える声が、私の耳に響く。



泣き顔も見えないほど、その腕に強く抱きしめられて。



私は航の胸に、顔をあずけた。



このどうしようもない気持ちを、どこにぶつけていいのかわからない。



「……うぇっ……うぁぁっ……!」



「……っ」



だけど航は、その全てを受け止めるとでもいうように、私を離さないよう、きつく抱きしめ続ける。



航も私も……彼方に対して同じ罪の意識を持つことになった。


でも航は、私のせいでそうなったんだ。



〝自分をかばったせいで、彼方が事故にあった〟。



……ホントは違う。


航のせいじゃない。



もうひとつの未来を作り出したのは、紛れもなく私なのだから……。