「……み、ほ……」



涙ぐむ私の視界にうつる彼方が、ピクリと動いた。



……えっ?




「彼方!!」



航が彼方の手をギュッと握りしめ、大きな声でその名前を呼ぶ。


ユラユラとする視界の中で、彼方のもう片方の手が私に伸びてきた。



重たい手を持ち上げて、最後の力を振り絞ってまで……。



「大丈夫……だ、から……」



彼方は笑って、そう言うの。




「彼方ぁっ……!」




だけどその手は、私に触れることなく、



力尽きるように、地面にゆっくりと落ちていった。