「確かに信じがたい話だけど、合点がいく部分はあるからね。最近の未歩、ぼんやりしてること多かったし……」
それに……と、彼方は私が手に持っているものを見つめた。
「小説書くのをやめてまで、そんな本を読んでるし」
それは『タイム・リープ』と、題名が書かれた一冊の本。
航を失うのが怖くて、私は小説を書くのを止めている。
「うん。私が小説書いてると、また同じことが起きる気がして……」
「確かに同じようにしたら、同じ未来しか待ってないかもしれない。やっぱり航をどうにかしないと……」
彼方が目を伏せてなにか考えてる。
そんな様子を見ながら、私は思った。
……彼方、全然驚かないんだなぁ。
半信半疑だけど信じてくれてるのか。
それとも完全に作り話だと思って付き合ってくれてるのか。
どちらにしても、私は安心したんだ。


