……待って。


……ダメ。


行っちゃ、ダメ。



「……航っ」



小さな声を、しぼりだすので精いっぱいだった。



こんなにも震えて情けない声は、だんだんと小さくなっていくあの背中には、きっと届かない。



「未歩……?」



彼方が私の異変に気づき、不思議そうに首をかしげた。



このままじゃ……航が……っ!



私は急いで、震える足を動かす。



「……ちょっ、未歩!」



うしろから、彼方が追いかけてきてる気がした。



だけど、そんなこと気にならないくらい、今は必死だった。




いやだ。いやだ。


行かないで……!!




航の背中は、ここから確かに見えるのにとても遠い。



あまりにも小さくて、手が届かない。



だけど必死に、つかまえたくて手を伸ばした。