中庭まで来てふと思う。

バカだ。

なんで言わなかったんだろ。好きですって。

たった四文字なのに。

私の意気地なし。

臆病者。

「おーい。」

かすかに聞こえる、中西くんの声。私、幻聴まで聞こえちゃうのかな。

うん、早く忘れなきゃ。中西くんのこと。

「神倉ー!」


「幻聴なんて聞こえない!」

「幻聴じゃないって。」

やけにリアルな声がする。

やけにリアルに、中西くんの声がする。

「!中西くん…」


振り返れば私の好きな人が笑顔で立っていた。