「もう、帰りなさい」

教室に入って告げると、生徒は顔を上げて美保を見つめてきた。

教室の電気は消され、逆光で顔は見えなかった。

生徒は本を閉じ、立ち上がって学級手帳を手にして向かってきた。

「ロッカーの上に忘れてましたよ」

聞き覚えのある声。

不良気取りのくせに、妙に人懐っこい声。

顔がはっきりと見える。

{…舞矢君}

そして、生徒は学級手帳を美保に手渡し、耳元で呟いた。