「悪いと思うんだったらいいじゃん」 「何がしたいの?」 黒いはずの舞矢の毛先は、天井で光る蛍光灯の明かりで茶赤に見えた。 伏せておぼつかない目で、見下げてくる舞矢を退かそうと身動ぎをとる。 その瞬間、唇に人の体温を感じた。 当たる唇の端で、絆創膏が擦れる。 キスだと分かる。 把握できない状況で、いくらキスでも目は開いたままだった。 {え…………っと?} 「っん、む…」 力の抜ける唇に当たるだけだったキスが、更に深く押されて、反射的に目をつぶって舌の侵入を拒む。