そっと箱を開けると、その空間いっぱいに甘い香りが広がった。
ほのかに優しい。
でもどこか切ない。
どうして、これを?
バレンタインは、想いを寄せる相手に…、大切な相手に渡すんだろ?
なんでオレなんかのとこに。
聞いてはいけないことなのに、オレは自分に対する自信のなさで、サイテーなことを言ってしまった。
わかってる。
わかってるけど…
「……省吾にも、渡したのか」
野崎は、黙ってうなずいた。
「だよな」
一気に体中の力が流れていく。
当たり前だろ。
何を期待してるんだよ。
オレだけなわけ、ないじゃないか。

