「……」
ドクン、ドクン
ドクン、ドクン
「陽奈ー。あれ?ここに来たと思ったんだけどな。教室に戻ったか…」
ドクン、ドクン
ドクン、ドクン
背中に感じる、布地のこすれ。
差し込む光のせいで、シルエットが映し出されないことを願った。
オレは息を殺してカーテンの中に潜み、その胸の中に野崎を抱えてた。
見つかるわけにはいかない。
知られるわけにはいかない。
今この時間も。
ずいぶん前からの、この想いも。
「圭吾くん…」
「いいから黙ってろ」
省吾の気配が消えるのを待つ。
一人じゃなく、二人で。
そして音楽室を出て行くと同時に、省吾が言ったため息混じりの言葉は
見えたはずのないオレたちに、聞こえよがしに言ってるようにも感じた。
「今日が何の日か、知らないはずないんだけどな」
バタン…

