蜜ショコラ




また、夕日が沈んでいく。

今日は、いつもの放課後よりどことなくにぎやかな気がした。

そのせいもあって、オレは思い通りに音楽室を出ることができなくて

人目を気にせず帰れる時間を、ただ何をするわけでもなく静かに待っていた。



窓の下を見下ろせば、たくさんの生徒たちが帰っていく姿が見える。

偶然、野崎が通ることはないだろうか。

自分から突き放したくせに、情けなくも姿を探してしまって。



もう、来るな



やっと話した言葉が、あんな言葉で。

野崎をどんな気持ちにさせてしまっただろう。

わずかでも、傷つけてしまったかもしれない。



もっと上手く言えなかったかな。

せめて嫌われない言葉で、返せたらよかったな。



でも

嫌われても、その方がいいのかもしれないな。



どうせ、一緒にはなれないんだから。