「だって、時雨と一緒に寝たいんだよ」




湊の言葉は拗ねた子供のようだった。


いつもは言わないようなそんな声で、私に可愛いことを言わないで。

何でもしてあげたくなってしまうから。

湊は本当に性質が悪いと思う。




「時雨がずっといてくれるなら、ここでもいい。でも、そうじゃないだろう?夜とか、朝とか、ご飯の時とか。時雨と一緒がいいんだよ」




湊は信じられないくらい甘えん坊になっていた。

こんな湊を見たのは、後にも先にもこの時だけ。


いつも大人で冷静な湊が、自分の欲望のままに私に告げる。

初めて見る湊の姿にときめいてしまったのもまた、事実だった。


顔がどんどん赤くなるのがわかる。

それを見て湊は、ここぞとばかりに私におねだりをしてきた。



ベッドから私を手招きする。

そんな誘惑に逆らえるわけがなくて、私はベッドの傍に立つ。



すると湊は私をベッドに引き込んでしまった。

リクライニングで寝ているのと座っている中間の状態。

そんな状態で私を引き込んで、私を胸の中にすっぽり抱えてしまった。




いつもより少し熱い体温が、私の肌を包んでいる。

胸の鼓動が、私の耳元で聴こえた。