だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版






「お前は相変わらず動揺しないな」




私をすっぽりと抱き締めたまま、森川はぼそりと言った。

頭の上から聞こえるその声に、全ての神経が集中していた。


聞き漏らさないように、しっかりと受け止めながら。




「少しくらい、驚けよ」




冷静なフリをしているだけで、心の中は十分過ぎるほど驚いていた。

驚きすぎて、私は動くことさえ出来なかった。


自分の感情が何も湧いてこないまま、ぼんやりとしていることで精一杯だった。




「森川、どうしたの?何か、あったの?」




搾り出した声は、今にも泣き出しそうな声になってしまった。

震える私の声を受け取って腕に力を込めるたび、心臓が掴まれていくようでとても怖かった。


森川の腕の中で、私の抵抗は何も通用しない気がしていた。




「・・・あったよ。だから、慰めてくれよ」




何とか漏らした森川の声が懇願の響きを含んでいて、私は尚更どうすることも出来なくなった。

その大きな背中に手を添えてあげることも、声をかけてあげることも。



今の森川に必要なもの、それが何か分からなかった。

少なくとも、私が背中に回す手の温もりや、森川の言葉に応える声。

そんなものではない、と感じていた。