森川の視線が私の目から離れて、そっと下の方へずれていった。
その目は私の左腕に注がれているのがわかって、私はさらに強く左腕を掴んだ。
それを見た森川は、静かに表情を崩した。
今まで怖いくらいの無表情だった森川。
緩んだ表情がいつもの森川になって、私はほっとして手を緩めた。
「もり――――――っ!」
不意に引かれた強い力は、私が初めて感じる強さだった。
大きな胸も。
規則正しく鳴る音も。
隙間のないこの距離も。
自分の左手を掴む力を緩めた私の右手を、森川は思い切り引き寄せた。
突然のことにわけがわからず、抵抗することも忘れて私は動けずにいた。
ただ。
背中に当てられた大きな手の力が、私を押さえつけて苦しくさせた。
こんな時でさえ私は、森川はこんなに大きかったかな、とぼんやりと思っていた。
どうしてこんなことになったのか、なんてことは微塵も考えていなかった。
森川が想っていること。
それは本人に聞けばすぐにわかることだ。
森川は、私に嘘を吐いたりしない。
『嘘が人を救ってくれる』ということを、この人は絶対に思ったりしないから。
上手く言葉に出来なくても。
自分の気持ちに嘘を吐くと苦しくなる、と。
教えてくれたのは、森川だった。

