首筋に圭都の柔らかい髪の毛が当たる。

圭都のおでこが私の肩に乗せられているのだと理解した。


そのぬくもりに、私の感覚が反応する。

意識がそこに集中しているみたいに。




「・・・反則、バカ」


「何よ、その言い方は」


「・・・ごめん、杉本のこと。俺に言ってくれればよかったのに。なんで言わなかった?」




搾り出すような声が耳のすぐ近くで聴こえて、私の胸を更に苦しくさせた。

それは、悲しさで締め付けられた苦しさではなかった。



いとしさが込み上げて、胸を苦しくさせていた。

この人に対する『いとしい』が、積もった証拠だった。




「杉本さんのように、真っ直ぐ『圭都だけ』とは言ってあげられないから。いつも甘えてばかりで、支えてもらってばかりだしね」




どうやったら大切に出来るのかを考えているけれど、結局上手く大切に出来ない自分がいた。

湊を想い出す度、圭都を苦しめているような気がして。




「圭都の言葉に甘えて『三人で生きていく』なんて。結局、圭都を苦しめるだけなのかも、って想っちゃったの」




杉本さんに言われた言葉が頭を回っていた。


『圭都にとって、何が一番幸せかってことを』という言葉。


ずっと、考えていた。

『圭都の幸せ』が、何かを。