どいたどいた
あたしの前に出るんじゃないよ

本心なんて見せるもんじゃない

あたしは自分のことしか見てないさ

ーーだってあたしは猫だもの



彼女の名はリリ。
白と黒のふわふわの毛並みを自慢にしている。
リリは人間達の生活する街の隙間で生きてきた野良猫だ。
今彼女は閉店間際のスーパーの裏手にいる。

もう少ししたら店員が今日の売れ残りを捨てにくる。

あの店員はあたしを見つけると追い払おうとするけどそんなの全く気にもならない。人間なんかに捕まるような馬鹿はしないわ。


幸いにも店員はリリに気付かず戻って行った。
無駄は避けたいリリにとっても良かったことだ。

リリは素早くビニール袋を開ける。
新人の野良猫は苦戦するようだがこれにはコツがある。
リリは手際よく結び目の下に爪をかけ破った。
そしてお目当ての惣菜の切れ端をくわえて闇の中へ走り去った。