「緊張してるかえ?」



「全く....といえば嘘になりますね。」





「ガハハハ。わしも緊張しておる!」






さようですか....。




「なんたって、こっから歴史が変わるきに!」




「........そうですね。」





その日....





薩摩藩主の西郷隆盛は来なかった。
 





その5日後、小松帯刀での密会が行われる予定
だったが私は行かなかった。




また待ちぼうけをくらうのなんてまっぴらだもの。




私は長崎に滞在している晋作を誘い、甘味処へ行っていた。




「桜、お前本当に小松帯刀へ行かなくて良かったのかよ。」   

 


少々呆れ顔で言う晋作だが、内心は桜からの
誘いだったので喜んでいた。




「いーの!この間私が待ちぼうけをくらったのだから次はあっちの番よ!」




「おいおい....藩主ともあろう者がそんな幼稚な理由で密会をサボっていいのか?」





「う....」





何も言い返せません。




1人でへこんでいると、店に黒い殺気に似たよ
うなものを漂わせながら桜の背後に忍び寄る
者がいた。





「松村殿....」





それは彼の普段の明るい声とはかけ離れ、低く唸るような声だった。