今日、連れて来られた女の子を一人、裏口からこっそり逃がした。
周りがほとんど男ばかりの中で女の子の存在は嬉しかったけど、その子は進んでここに来たわけじゃなくて。
その子が強引に屋敷の奴らの相手にさせられるのを見せられた時、こんな所に居させるわけにはいかないと思った。
裏口の場所は知っている。
どうすれば逃げられるかももう分かっている。
けどその子を送った時に聞かれた。
「茉梨亜は……逃げないの……?」
私は逃げられなかった。
逃げた所でもう行く場所が無い。
屋敷の主…黒川に進んで乱された私が帰りたいなんて、傲慢なんだ。
「私は大丈夫だから」
そう言ってその子を見送ったけど、ちゃんと笑顔で手を振れただろうか。
私の顔は、今どうなってる?



