「だって見てないし。旗しか」
「見とけよ」
「俺鼻毛長い方じゃないし、必要ないかなって」

「待て待て現在進行系で鼻毛抜いてる俺が長いみたいじゃないか」

「違うの?」

「伸びただけ、だ!」

「……」


「しかしどんなヤツなんだろうな、鼻毛バリカンって」
「電動かな、手動かな」
「電動じゃね?なんか」

「でもバリカンの構造的にあのまま小さくても鼻の穴に入れるの怖いよね」

「筒になってんじゃね?火炎放射器みたいに」

「凄い例えだね。筒に穴がいっぱい空いてる感じ?」

「そうそう!んでスイッチ入れたら回転してさ、穴で鼻毛を素早く絡め取って」

「電気剃刀のミニサイズ縦バージョンみたいな?でもブチブチしそう」

「だな。鼻血注意の説明付けねぇと」
「毛穴から鼻血ってかなり悲惨だね…」

「俺はやっぱコレでいいや」

そう言ってピンセットを摘んで気合い一つ。

やっと管原はお目当ての野郎を手中に納めた。


「はー終わった……俺様ステキ」

「鼻毛抜いてる現場ってあんま見たくないよね」

「じゃあ俺の横に居るなよ」

「さっ仕事仕事…あれ?」


二人が洗面所から出ると、デスクに座っていた勅使川原が手鏡を見ている。


「てっしーが鏡見てる!」
「あん?なんだそれ」
管原は勅使川原の手元の物体に気付いた。

「あぁ、今朝スーパーに行ったら良い物があったからな……」


塔藤と管原は顔を見合わせる。


「スーパーで良い物って…」

「勅使川原、その黒いのは…?」


「鼻毛バリカンだ」







―おわり―