ー春の風がそよそよと髪を持ち上げて通り過ぎてゆく。 補正されたばかりのコンクリートを歩く君島宏菜(きみじまひろな)は、今日から新中学生だ。 高鳴る胸を抑えながら、震える足どりで集合場所へと急ぐ。 春といっても、まだ風は冷たい。 期待と不安が胸を渦巻いているが、これから始まる新しい生活に胸を躍らせていた。