あれは…

そう。

暑い夏の夜。

私が5歳でした。


家の近所の神社でやっていた…

お祭りでもらったものだった気がします。



「おい!お嬢ちゃん。」
「ひとつ買っていかないかい?」
「ほら!すごく綺麗だよ!」

「それなーに?」

「これわねえ。万華鏡っていうんだよ!」
「知ってるかい?」

「ううん。知らなーい。」

「こうやって穴を覗いて遊ぶんだ!」
「ほら!やってご覧!」

「わかった!」
「うわ~!お花みたいなのがくるくる回ってるよ!」
「きれ~!」

「そうだろ。」

「でも私、お金持ってないの。」

「え?そうなのかぁ。」

……

「よーしわかった!」
「これはおじさんからのプレゼントだよ!」
「夏の思い出にね。」

「ほんとに?いいの?」

「ほら!どーぞ。」

「ありがとう!」


「ままー!」

「もう。どこいってたの?」

「ほらー!これ!」

「それどうしたの?」

「屋台のおじさんがくれたの!」

「へー。よかったわね!」



それが…母との最後の記憶です。