中に入ると、恋占いの石というのがあった。



石と石の間を目を瞑って歩き、無事に辿り着くと恋が叶うという。



坂下とのことを願って歩くのはどうかと思い、何も考えずに歩いてみた。



途中で躓いたけれど、無様に転ばずに済んだ。



「大丈夫ですか?」



転びそうになった私を、坂下が支えてくれたから…。



きっと、心のどこかでは坂下とのこと…願ってたのかもしれない。



妻子持ちに横恋慕なんてするから、神様が罰を与えたのだろう。



ため息をつく私に、坂下はお守りを買ってくれた。



「アンジェに、素敵な恋が訪れますように…。」



そう言って坂下は、左手でお守りを渡した。



坂下の右手には、私が傷つけた痕がある。



坂下は私が気にしてるのを知ってるから、それを見せないようにしてくれている。



だから私に物を手渡す時は必ず左手なんだけど、今はそれがツライ。



結婚指輪を見せつけられてるみたい…だもん。



『私には、妻と息子がいます。』



私じゃ、ダメなんだ…。



そう思うと、心が痛んだ。



ちくちく…なんて生易しいものじゃない。



ズキズキと、痛むんだ。



周りに学校の連中が大勢いる時に泣いたら、坂下が困るのは明白。



舞妓のお化粧を落とすために洗面台へ向かうまで、泣くのは我慢した。