「可能です…が、女性に暴力を揮いたくはありません。」



んなこと言ってる場合か!?



梨香たちに知られたら、コイツの居場所失くすことになるぞ。



「そのようなことをしなくても、アンジェならば大丈夫でしょう。」



坂下先生はアンジェの耳元に口を近づけると、囁きかけた。



「アンジェリーナ、ティッシュで拭いただけでは気持ちが悪いでしょう?」



アンジェはおとなしくなり、坂下先生に濡れタオルで脚を拭いてもらっている。



へぇ…好きな男には従順なんだ?



蹴られそうになった身としては面白くないけど、こういうアンジェの一面を見るのは面白いな。



拭き終わったのか、坂下先生が立ち上がった。



僕はアンジェの耳に顔を近づけて、いつもの元気な声で怒鳴ってくれるのを祈りつつ、小声で話しかけてやった。



「なぁ、アンジェ。

坂下先生に脚を撫で回されて、カンジちゃった?」



アンジェは、僕の言葉には反応しなかった。



重症…だな。



手刀が僕の首筋、正確には頚動脈辺りに添えられた。



「蒼先生、私が人を気絶させることができるのかを知りたいのでしょう?

その身を以って、教えて差し上げましょうか?」



さ…坂下先生、マジで怖い!



「え…遠慮します。」



坂下先生は僕の首筋から手刀を退くと、呟いた。



「お見せできなくて、残念です。」



ってか、僕が受けたら見れないって…。