私は部屋からケータイを片手に、まだロビーにいるはずの坂下のもとへ向かった。



坂下は電話中だったけど、すぐに終わったみたい。



「先生、リコったら部屋にケータイ忘れてます。

いくらかけても出ないワケだ…。」



私は呆れた口調で坂下に伝え、梨香のケータイを見せた。



「アンジェ、ちょうど良いところに来ましたね。

たった今、余合さんが見つかったと蒼先生から連絡がありました。

他の先生方にもお知らせしたいので、メールを作って頂けますか?」



「任せて下さい。」



坂下からケータイを受け取り、ボタンを押す。



「今度、何かお礼をさせていただきます。」



お礼なんて別にいらないんだけどね、坂下に頼まれごとされたってことが嬉しいんだから。



でも、そんなことは言わない。



坂下が、どんなお礼を用意するのか楽しみだもん。