「あ、だからお母さんの遺骨が無いのかな?」



私の呟きに、坂下が反応した。



「遺骨?」



私は手帳に書いてある部分を指した。



「ご両親が船の事故で亡くなっているということなので、お母さんだけは海に沈んだままなのかなって思って…。」



「事故は、この辺りなのですか?」



「亡くなった原因を今知ったくらいだから、そこまでは…。」



坂下は、少し考え



「他に手掛かりは無いようですし、海沿い中心に探すよう指示を出しましょうか。」



そして、紙切れを見ながらケータイをいじる。



「あれ?違うな…。」



なんて言いながら。



「先生、何やってるんですか?」



「先生方に、メールをしているところです。

それにしても、結構難しいですね…。」



おいおい…この調子だと打ち終わるころには、日付変わってるんじゃないの?



「貸して下さい、私が打った方が早いです。」



私は坂下からケータイを受け取ると、ボタンを押し始めた。



坂下のケータイは、私が前に使ってたのと同じ機種だから、勝手は分かっている。



私は白を使ってたけど、坂下のは黒いケータイだった。



お揃いだったのなら、機種変更するんじゃなかったな…。



「凄いですね。」



坂下は感心していたが、今時これくらいできなくてどうする?



こんなんじゃメアド教えたところで、坂下からメール貰うなんて到底無理だと思った。



ケータイも使いこなせない40過ぎのオジサン、なんで好きになったんだろ?



私はそう思いながら、送信ボタンを押した。