家の前で車を停めてもらい、降りる。



「坂下、ありがと。」



運転席の坂下に声をかけると



「どういたしまして。」



坂下は、かけていたサングラスを少しずらして、目を合わせて微笑んだ。



その表情を…目を見たときに、私の胸の奥が、キュンとした。



ん?



キュン…って?



私は、坂下の車が見えなくなるまで見送った。



もっと、側にいたかったな…。



ちょっと待って、さっきからおかしくない?



コレじゃ、まるで坂下のこと好きみたいじゃない。



40過ぎのオジさんだよ、あり得なくない?



きっと、暑さで脳ミソやられたに違いない。



だけど、クーラーにあたってみても、シャワーを浴びてみても、坂下のことが頭に浮かぶと…。



翌日から、髪を逆立てるのは…やめた。



それ以来、HRや授業で坂下が教壇に立つ度、目で追っている私。



最初は、目が合うと少しキュンとしてただけだった。



だけど、姿を見かけただけで胸が高鳴ってしまうまでには、そう時間はかからなかった。



私…坂下のことが、好きなんだ…。