新学期早々、廊下を歩いていたら、坂下に話しかけられた。



「約束を守っていただいて、嬉しいですよ。」



あぁ、ピアスのことか…。



「ピアス外して分かったけど、耳が悲惨なことになってる。

自分で穴開けまくったんだから、自業自得だけど。」



坂下が私の耳を見て、眉をひそめた。



「傷痕、目立たないと良いのですが…。」



心配、してくれるんだ?



あ、そうだ、坂下にはきちんと報告しとかないとね。



「私、リコんち出て部屋を借りたの。

…と言っても、モデル事務所の力だけど。

あと、ママはアイツとは別れる気ないみたい。

だから、イギリスのパパの苗字名乗れるように手続取ろうと思ってる。」



そう言うと、坂下は少しホッとした表情をした。



「これからは、幸せになれると良いですね。」



坂下は私の頭に左手を伸ばすと、くしゃっと撫でてくれた。



その手が、少し嬉しかった。