梨香がペンを手にしている間、それを眺め…るわけにもいかない。



梨香が手を離している隙に、手のかかる奴が…。



視線を移すと、やっぱり悪戯してる。



「こら、和音!止めなさい。」



とはいっても悪戯盛りだ、止めるわけもない。



悪戯してる棚には、大怪我するようなものは無いから静観しようか…。



和音は、僕と梨香の子。



坂下先生の名前を拝借して、名づけた。



棚から本や冊子が崩れ落ち、和音に当たって泣き出した。



「だーから、言わんこっちゃないだろ…。

これに懲りて、もう悪戯すんなよ。」



僕は、和音を抱っこしてあやす。



「ぱー…。」



和音は僕を呼びながら、しがみついてグズる。



まだ『パパ』って言えないのは仕方ないけど、パーって言われるのは…。



梨香が崩れ落ちた本などを片付ける際、その中の1冊を手に取った。



「先生、これも持って行くのはどうかしら?」



「それって、高校の卒業アルバムだろ?」



「出来上がったのが卒業してから3日後だったから、坂下先生の棺には入れてないでしょ?」



「アンジェに持たせておけば、坂下先生に見せることができるってか…。

梨香、お前にしては冴えてるじゃん。」



「私にしては、って…余計よ!」