「手、出して。」



私は、言われた通りにする。



手のひらに、小さな白い欠片が転がった。



何だろう?



私が首を傾げると、教えてくれた。



「あの人の…遺骨。」



い…遺骨っ!?



そんなもの、どうやって手に入れたんだろう?



「元妻って立場を利用して、火葬場まで行ったの。

どうしても形見が欲しくて、こっそり持ち出したんだけど…。」



も…持ち出した!?



「あなたが持っていた方が、あの人も浮かばれるかな…って思い直したのよ。

どうせあの妹じゃ、墓参りさえさせて貰えないし…。」



確かに、ガキに手出したって相当怒り狂ってた。



だけど…。



「返さない…んですか?」



「どのツラ下げて、骨なんか返しに行くのよ?」



すねたような表情で、彼女が言う。



言われてみれば、返すに返せない代物。



「で、要るの?要らないの?」



そりゃあ、もちろん…。



「大事にします。」



心から愛した人の、欠片だもん…。



彼女は満足そうに微笑むと



「それで良し!

じゃ、もう会うことは無いけど、元気で…。」



そう言って、去った。



もしかしたら、最初から私に渡すつもりで…?



「ありがとう…。」



私は、彼女の後ろ姿に向かって呟いた。