教室に戻ると、みんなが教壇に集まっていた。



「何してるの?」



「先生に手紙貰ったから、お礼の言葉をボイスレコーダーに吹き込んで供えようってことになったんだ。」



供える…か。



頭では分かりきっていることなのに、心がその流れについていけない。



私は席に着き、教壇の様子を眺めた。



お礼の言葉…のはずなのに、みんなは坂下が反論できないのをいいことに、結構好き勝手なことを言ってる。



「アンジェも、何か言おうよ。」



クラスメイトに手を引かれ、私は教壇に向かった。



何て言おうか…。



私は思いっきり息を吸い込むと、一気にまくし立てた。



「和さんの…、バカっ!

どこの世界に、遺書でプロポーズする奴がいるのっ!

答えは、yesよ。

yes、 yes! yes!!

その代わり、私がシワシワのばあさんになってからそっちに行ったとき

『あの話は無かったことにしてください。』

なんて言ったら、殺すから!」



みんな、呆然としていた。



クラスの男子が、やっと…というかんじで口を開いた。



「あのさ、アンジェ…。

ツッコミ、入れて良い?」



「何よ?」



「『殺すから』って…、先生もう死んでるから。」



……確かに。



「はぁっ?突っ込むとこ、そこ!?」



「もっと気になる発言、あったでしょ!?」



他のみんなが口々に言う。



「プロポーズって、何なの?」



「それよりも棺桶の先生にキスしてた件、聞きたいんだけど?」



20人以上に囲まれて逃げ切ることはできるわけもなく、私は坂下とのことを喋る羽目になった。