速攻で中に入った坂下先生に続き、僕も中に入る。



廊下にクイックルワイパーがたてかけてあったので、その柄を取り外した。



声がした部屋に向かうと、Tシャツを裂かれたアンジェを数人の男が取り囲んでいた。



これって、強姦…だよな?



坂下先生は、現行犯で捕まえる気でいたようだ。



僕らをめがけて、男の1人が殴りかかってきた。



坂下先生はそいつの腕を取ると、投げ飛ばした。



この人、武道やってたんだ…。



ひゅうー、なんて口笛吹いたら、思いっきり睨まれた。



うひゃー、やっぱり坂下先生は怖いな…。



僕は、ビデオを片手にしてる男の手に、小手をお見舞いした。



こんなもの、ずっと回されたら敵わないからな。



しかしクイックルワイパーでは、あまりサマにならない…。



「痛ってぇ…一体、何者だよ?」



「アンジェリーナのクラス担任、坂下和。」



な…名乗るんかい!



心の中でツッコミ入れつつ、僕も続けて言った。



「同じく副担任、蒼柾樹。」



「さて、合気道三段と…。」



「剣道四段!」



「どちらの説教を受けたいですか!?」
「どっちの説教を受けたいか!?」



お、ハモった。



僕より10cm低い坂下先生が、さっき投げ飛ばしたことで少し乱れた前髪をかきあげて僕を見上げた。



「打ち合わせなしで、よく同じセリフが言えましたね。」



僕は、坂下先生を見下ろして言った。



「ダテに女房役、1年以上もやってませんから。」



2人して、ニヤリと笑い合う。