「アンジェリーナ・フロックハート、アクセサリーは校則違反だ。

今すぐ、その指輪を外せ。」



教頭が、私に警告する。



しまった!油断してた。



蒼が黙認してくれてたのもあるけど、今まで見つからないように隠してたのに…。



警告中に外さないと、没収される。



でも、絶対に外したくない…。



車椅子に置かれた私の手の上に、坂下の左手が重ねられた。



「教頭先生、申し訳ありません。

しばらくの間、見逃しては頂けないでしょうか?」



坂下はそう言うと、深々と頭を下げる。



教頭は、坂下の左手にも同じ指輪がはめられていることに気付いたのだろう、重ねられた手を見ていた。



「貴様ら、そういう…ことか。

坂下、何を考えてる!?」



余命幾ばくもないのに…という意味か、生徒に手を出したことに対してなのか、教頭は坂下を非難した。



どうして、坂下ばかりが非難されなきゃならないんだろう。



私たちが愛し合うのを罪だというのなら、私だって非難されるべきなんだ。



少しの間、教頭と坂下は睨み合った。



その時間が、私には長く感じた。



教頭の出方によっては、例え坂下が止めても私が矢面に立とうと思った。



だけど、睨み合いの末、先に根負けしたのは教頭だった。



ため息をつくと



「坂下、離婚したとは聞いていたが…。

今回は、見なかったことにしておく。」



そう言うと、足早に去っていった。



坂下は重ねられた手で私の手を軽く握ると、病院に戻るために車に乗り込んで行った。