向かった先は、最近できたばかりのショッピングモール。



坂下はジュエリーショップの前で立ち止まり、ウィンドウを眺める。



「和さん、何見てるの?」



「アンジェに、何かプレゼントしたいと思いまして…。」



坂下がそう言うからウィンドウを覗くと、どんなに安くても10万単位…。



もうすぐ卒業するとはいえ、高校生の私には不相応なものばかりだ。



「こんなに高価なもの、私には似合わないよ。」



「最初で…最後ですから。

私の目の黒いうちに、自分が贈ったものを身につけているところが見たいという、私の自己満足です。」



そんなこと言わないでよ、悲しくなっちゃうじゃない…。



私はウィンドウから離れたくて、坂下の袖を引いた。



「以前、蒼先生からネックレスを貰っているのでしょう?」



そう言うと、私のネックレスに触れた。



今身に着けているのは確かにそうだけど…、ここにあるような高価なものじゃない。



「まるで、蒼に対抗してるみたい。」



沈んだ気持ちを振り払うつもりで、冗談交じりに言ったら



「いい年して嫉妬などと…、あなたから見れば滑稽でしょう。」



坂下はそう言って、自嘲気味に笑う。



「蒼なんかレベル低すぎて、和さんの足元にも及ばないよ。」



坂下が嫉妬するのは、私を愛してくれているから…そう考えると、自然と顔がニヤけてくる。



だらしなくニヤけた顔を見られたくなくて、私は俯いた。



「アンジェが辛くなるのでしたら、やめましょうか?」



私が俯いたから勘違いしたのか、坂下が頭を撫でながら尋ねた。



「リクエスト…しても良い?」



私が顔を上げたら、坂下は嬉しそうに言った。



「どうぞ。」



「私、ペアリングが欲しいの。

和さんが、イヤでなければ…。」



「私は構いませんが、ただ…。」



「ただ?」



「もう少し、安価なところで購入しても宜しいですか?」



「もちろん!

お揃いなら、オモチャの指輪で良いよ。」