離縁、って…。



離婚のことだよね!?



突然の…いや、意外な…と言うべきか、私はこの展開について行けずに驚くばかりだった。



坂下が部屋中にばら撒いた物の1枚が、ドアの外で様子を窺っている私たちの側まで流れてきた。



見ると奥さんの浮気現場の写真で、私が見たときとは別の人と写っていた。



「私が書くべき欄は、記入済です。」



坂下はそう言うと、奥さんに薄っぺらい紙を突きつけた。



多分、離婚届…だろう。



「そんな、いきなり…?」



この展開について行けないのは、奥さんも同様らしい。



蒼は目の前の写真を拾い上げると、ドアをノックした。



ち…ちょっと、蒼っ!



「写真、ドアのところにも落ちてましたよ。」



「蒼先生、いらっしゃったのですか。」



「写真ばら撒く前からですけど、相変わらず演出カッコイイですよねー。」



「茶化さないでください。」



蒼は病室にばら撒かれた写真を回収しようと、数枚手に取った。



それを見て目を丸くすると、他の写真にも手を伸ばす。



「はぁ!?何だコレ?写真、全部違う男!?

公衆便所かよ、このオバサン…。」



あの、数十枚はあろうかという写真…が?



「蒼先生、届出が受理されるまでは私の妻です。

そのような発言は控えてください。」



坂下は、苦笑いをしながら言った。



「別れる気なんてないわ!」



そう言い放った奥さんが、ドアに向かってくる。



あんなに大勢の男と浮気しておいて…、坂下と別れてよ!



文句の1つでも言いたいけれど、坂下に来たことを知られるのはまずいから…。



私は姿を見せないように、隠れた。