顔面血まみれになっている自分の息子を、なおも蹴り続ける坂下。



それを止めたのは…。



「坂下、…ぜぇ…もう、…はぁ…やめ…ろ。」



院長はそう言うと、息切れのせいか噎せた。



「止めないでください。」



「生徒の目の前で、殺す気か?」



その言葉に坂下は蹴りを入れるのを止め、唇を噛み締めた。



表情が少し和らいだことに、ホッとした。



さっきまでの坂下、今までに見たこともないくらい怖かったから…。



坂下は私のところまで来ると、着ていたガウンを私にかけてくれた。



「痛かったでしょう、こんなに腫れて可哀想に…。」



私の頬を撫でると、坂下は院長に向かって言った。



「あと2~3発、殴らせてください。」



「ダメだ。

既に半殺しにしておいて、まだ殺る気か?」



坂下の息子がどんな様子かなんて見る気になれないけど、院長の所見ではかなり酷いらしい。



「間に合わなくて、申し訳ありません。」



坂下は私に向き直ってそう言うと、優しく抱きしめてくれた。



いつもの、穏やかな表情だったから…思いっきり甘えられた。



こうして優しくしてくれるなら、娘扱いでも悪くないかな…。