病室から出ると、また涙が溢れてきた。



病院の玄関辺りで、駆け寄ってきた蒼に追い付かれた。



「送るよ。」



「要らないっ!」



そう言ったのに、蒼は私の腕を掴むと、自分の車に乗せた。



車のエンジンをかけた蒼は



「どこ行きたい?

海でも夜景でも、見たいのあったら連れて行ってやるよ。」



「どこでも良いの?」



「良いよ。」



「じゃあ、ラブホ。」



「はぁ!?お前、オカシイだろ?」



「忘れたいの…。

坂下のこと、忘れさせて!」



泣きながら言うと、蒼がため息をついた。



「お前、娘扱いされて拗ねてるだけだろ?」



「そうだよ、悪い?」



「居直るな。」



蒼が、私の頭を小突いた。



「そんなんじゃ、娘扱いされても仕方ないだろ。

それに坂下先生の子供、もう大学を卒業するって話だし。」



坂下、そんな大きな子供いたんだ…。



「で、どうする?」



「帰る。」



「了解。」



蒼は、私の家まで車を走らせた。



「なぁ、アンジェ。」



「何よ…っ。」



私は、鼻をすすりながら言う。



「坂下先生の前で泣くなら、もう病院行くなよ。

迷惑なだけだ。」



ごもっともな蒼の言葉に、言い返すことなんてできなかった。