あんなこと思い出させやがって…!



そう怒鳴りたかったけど、調子が良くない。



それに、坂下は謝っていることだし…。



「気に、しないで。

ちょっと…苦手な、だけ。」



「ちょっと…というようには見受けられません。

保健室へ行きましょう。」



「え…良いって、もう平気。」



「ピアス穴の消毒も必要です。」



逃げようとしたら、ふわっと宙に浮いた。



坂下が、私を抱えたから…だった。



こんなところを誰かに見られたら、恥ずかしい…。



「お…降ろして、ちゃんと保健室行くから。」



そう言うと、坂下は私を降ろし、保健室までついてきた。



中に入ると、保健医が留守にしていたため、坂下が消毒液を取り出し、私の耳に近づけた。



坂下が利き手じゃない左手を使うのは、私にあの傷痕を見せないため…。



消毒は少し、しみた。



だけど、あんな醜態晒しておいて、泣き言なんて…恥ずかしくて言えない。



消毒が終わると、予鈴が鳴った。



教室に戻ろうとしたら



「顔色が良くありません、休んだ方が良いですよ。」



「1人で、居たくない。」



あの嫌な記憶が頭を離れないから、人がいるところに…居たい。



「では、次の時間は授業がありませんので、ついていましょうか?」



坂下がそう言ってくれたので、安心して横になることができた。